相続登記変更前の空き家の解体~可否と注意点~

現在いたるところで自然災害は発生し、多くの方が被害に遭っています。
台風、豪雨、または強風や竜巻などの自然災害によって、多くの方の家屋は浸水し、倒壊し、破損したりしています。
このような状況の中、自然災害で亡くなった親から相続した被害を受けた建物の解体工事をしたいが、どうすれば良いのか、と考えておられる方もいるかもしれません。自然災害は、突然に、または予期せず発生するものなので、まだ相続登記変更を行っていない方もいるかもしれません。
では、相続登記変更前に解体工事を行うことは可能なのでしょうか。

相続登記とは

まず、相続登記とは何かを考えてみましょう。
相続登記とは、相続した不動産の名義を、亡くなった被相続人から相続した相続人の名義に変更することです。相続登記は国の機関である法務局で行う手続きです。
相続登記が必要な理由
相続登記をする主な理由は次の危険を回避するためでもあります。
  • ・権利関係が複雑になる
  • ・売却や担保として差し入れることができない
  • ・他の相続人の事情により差し押さえられる危険がある
相続登記をしていれば以上のような問題点を回避することができますが、相続登記を行うにあたり考えるポイントとなるのは、何でしょうか。
それは、相続した財産を自分で管理したいのか、それとも相続人全員で管理したいのかです。
相続登記の種類
相続には次の3つの種類があります。
相続登記もその相続に関しての3つの種類のいずれかに基づいて行われます。
  • ・遺産分割協議による話し合いで相続登記を行う
  • ・遺言書に従って遺産分割する
  • ・法定相続分どおりに遺産分割を行う
相続登記はいつまでに行うのか
相続税の申告は、相続が発生してから(親が亡くなってから)10か月以内に行わなければなりませんが、相続登記に関しては期日が定められていません。 では、自然災害で亡くなった親が所有する建物または家屋が被害を受けた場合、相続登記変更前の建物の解体工事を行うことは可能なのでしょうか。
建物の所有者である親が生存していて、認知症で判断能力がない場合は、後見人の許可などの手続きが必要になりますが、相続発生が自然災害による死亡のケースですと、解体工事を行うことは可能です。
実は、現在でも多くの建物または家屋が相続登記をされないまま、亡くなった親の名義となっています。実際、相続登記は義務ではないので、相続登記をしていないので相続できないということはありません。
しかし、注意点もあります。

解体工事を行う場合の注意点

相続登記を行っていない建物の解体工事を行う場合、次の点に注意する必要があります。
  • ・相続した建物または家屋の住宅ローンが残っている
    建物に金融機関の抵当権が設定されている場合の解体工事は、抵当権者の事前の承諾が必要になります。
  • ・建物滅失登記を行う
    建物の解体工事をしたら1か月以内に建物滅失登記をする必要があります。
    もし、建物滅失登記を怠ると、10万円以下の過料に処されてしまう場合があるので気を付けましょう。
    さらに、建物滅失登記を怠ると、建物に対して引き続き固定資産税が課税されてしまいます。

まとめ

自然災害などで亡くなられた親御さんから相続した被害を受けた建物は、相続登記をしていなくても解体工事を行うことは可能です。
しかし、上記のような注意点もあります。そのため、解体工事に際しては、行うべき確認や手続きを決められた期日以内で行いましょう。
そして、相続人が複数いる場合は、まず解体工事によって建物を取り壊すかどうかを相続人で協議しましょう。そうすれば、後々にトラブルが起こることを避けることができます。