大阪市の空き家の現状とその問題点、「割れ窓理論」とは

人口減少社会、少子高齢化、そして都市部への住宅需要移動などにより、現在全国の空き家総数は約846万戸にも上り、空き家率は13.6%になっています。つまり、7戸に1戸は空き家というのが現状です。
大阪市では、約18万戸が空き家となっている深刻な事態となっています。今や社会問題となっている「空き家」ですが、空き家の放置が問題となっている理由の一つに「割れ窓理論」があります。
「割れ窓理論」とは何でしょうか。どのように「空き家問題」と関係しているのでしょうか。

景観・治安の悪化と「割れ窓理論」

適正な管理がされていない空き家では、窓が割れてしまっていたり、庭の雑草が高く伸びて害虫などの繁殖の原因となってしまったり、景観の悪化がもとで地域全体の治安の悪化の原因となってしまったりと、良いことはありません。
興味深いことに、空き家率と犯罪率は比例するとも言われています。例えば、「割れ窓理論」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
「割れ窓理論」とは、1枚の割られたガラス窓をそのままにしておくと「この建物は誰も管理していない」という推測を生み、さらに割られるガラス窓が増え、軽犯罪が増加するという理論です。
「割れ窓理論」はアメリカの犯罪学者ジョージ・ケリング博士が提唱した理論ですが、割られたガラス窓を放置していると、やがて地域住民のモラルも低下していき、環境を悪化させていき、いずれ街全体が荒廃していくという考えが含まれています。
犯罪多発都市であるニューヨーク市で、1994年以降に、当時の市長であったジュリアーニ氏は、この「割れ窓理論」を念頭においた対策を実践し、割られた窓の修理や建物への落書きなどの軽微な犯罪の取り締まりを強化しました。その結果、ニューヨーク市の犯罪が大幅に減少したと言われています。
空き家が問題視される一つの原因に、この「割れ窓理論」が取り上げられることが多いようです。空き家にごみが放置されていたり、手入れのされていない庭木があったりするのが理由で、地域住民の秩序が乱れ、やがて大きな犯罪につながる可能性は十分に考えられます。

空き家の撤去、管理、活用の必要性

「空き家問題」の解決には、空き家の管理、撤去、そして活用術が必要です。
しかし、どの方法を採るにせよ、空き家が地域一帯に広がる前に空き家のオーナーや自治体による何らかのアプローチが必要なのではないでしょうか。
空き家のオーナーがいずれかの対策に乗り出せればいいのですが、オーナーが高齢であったり、空き家の所在地よりも遠いところに住んでいたり、空き家を相続したのはいいけれど兄弟姉妹間で話し合いがまとまらず管理責任が不明確であるといったことが理由で、なかなかうまくいかないことも多いです。さらに、解体工事によって空き家を撤去しようと思っても費用がかかったり、活用しようと思っても売れない、貸せない状態であったりして、「空き家問題」は色々な事情で非常に複雑です。
国は、「空き家対策特別借置法」によって、適切に管理されていない空き家を「特定空き家等」に指定することで、各地の自治体が空き家のオーナーに撤去や修繕を促すことを行なっています。しかし、相続や税制、不動産市場との兼ね合いなど、空き家のオーナーだけの努力で解決できる問題ではないのではないでしょうか。
行政が空き家問題への対策を整備したうえで、空き家の撤去や管理、活用を上手にサポートする機能・役割をもった専門的な空き家仲介業者の助けが必要です。

まとめ

空き家の放置は、大きな問題へと繋がりかねません。空き家のガラスを割れたままにしておくと軽犯罪につながる恐れがあります。
「割れ窓理論」どおりの悪い結末を迎え地域住民に迷惑をかける前に、早めの対策で被害を最小限に抑えましょう。