空き家の相続権を放棄すると空き家の管理義務はなくなるのか?

近年、亡くなった親族から空き家を相続して持て余している人が増加しています。
すでに持ち家があり、引っ越す必要がない場合は、家屋を相続しても持て余してしまうのは致し方ないことです。
しかし、空き家を放置したままでいることにはリスクが伴います。
今回は、空き家を放置しておくことに伴うリスクと、空き家の相続権放棄が管理義務からの解放につながるのかを考えていきます。

空き家を放置しておくことのリスクとは?

空き家を放置しておくことには、さまざまなリスクが伴います。
  • ・倒壊の危険性
  • ・放火による火災
  • ・不審者の出入りなどによる治安の悪化
  • ・衛生面や景観による近隣住民や通行人への迷惑
などを挙げることができます。
長い間放置された空き家は老朽化が進んでいるため倒壊のリスクが高くなります。空き家が倒壊してしまい、人や物を傷つけてしまった場合、空き家の所有者が賠償責任を負うことになりかねないので注意が必要です。
さらに、空き家の放置に伴う大きなリスクの一つに放火による火災があります。
火災が発生してしまった場合、近隣住民の家屋にも延焼する可能性があります。そうなると、近隣住民に迷惑がかかるどころか、空き家または土地の所有者が近隣住民から損害賠償を求められることになります。そうなってしまうと、空き家の所有者にとって金銭的に大きな損害を被ることになってしまいます。
そして、長い間空き家を放置しておくと、家屋が老朽化してしまうだけでなく、不審者が勝手に住みついてしまう危険もあります。
過去に、犯罪の温床になって近隣住民に多大の迷惑をかけたという事例もあり、ニュースでも取り上げられました。
また、不審者だけに留まらず野生動物が入り込み、悪臭を発生させて近隣住民に迷惑をかける結果となってしまいます。

空き家の相続を放棄すると管理義務はなくなるのか?

空き家の相続権を放棄すると、空き家の所有権がなくなります。
そうなると、固定資産税の支払い義務はなくなりますが、空き家の管理義務はなくなりません。空き家の相続人全員が相続権を放棄した場合、放棄した相続人全員に管理義務が残りますが、自分以外に相続人がまだいる場合、管理義務は発生しません。
では、未相続の空き家を解体することはできるのでしょうか。原則として、身内の人であっても相続人以外の人が空き家を解体することはできません。
しかし、家庭裁判所に申し立てを行って、裁判所から「成年後見人」として選任され認められれば、空き家の解体工事の手続きを進めていくことが可能です。

まとめ

今回は、空き家を放置しておくことに伴うリスクと、空き家の相続権放棄が管理義務からの解放につながるのかについて考えてきました。
相続した空き家を放置しておくと大きなリスクが発生します。できるだけ早く空き家の解体工事を行うことをおすすめします。
そして、相続権を放棄しても、他に相続人がいない場合は、管理義務が残ることになります。
しかし、成年後見人を選任することで解体工事を行うことは可能なので、事前に良く権利関係を調べて、計画を立てた上で、スムーズに解体工事を行えるようにしましょう。